フランスでビジネスをしようとする企業に、フランスへの投資を検討すればと提案すると、判を押したように「フランスは労務管理が難しい」「一度、雇ってしまうとなかなか解雇できない。」「病欠を何度も長期に渡って取られて大変だったという話を聞いたことがある」などと否定的な声が返ってくる。
本当にフランスの労務管理は難しいのか。もちろん、労務管理上、日本の企業では考えられないような細かい対応が求められることがある。例えば、1年に一度は、それぞれの労働者との面談が義務付けられており(entretien annuel) 、そのやり取りも記録として残しておく必要がある。これを怠ると労働訴訟などがあった場合、雇用者側がペナルティを受けるリスクを負う。このほかにも、法に定められた様々な雇用者側の義務はきちんと実施しておく必要があるし、労働者側からの要求や苦情があった場合には、これらに適切に対応しているというエビデンスを残しておかなければならない。
しかし、これらは日本でも同じように、労働法に定められている基本的なルールを守らなければいけないのとそう変わりはない。すなわち、サービス残業をさせない、有給休暇を取得させる、パワハラやセクハラなどのない良好で、安全な職場環境を確保する、といった義務の履行である。これに加えて、若干、細かな、ただきわめて合理的なルールがあるのみである。これらのルールを知っている人事担当者がいれば問題はない。
解雇規制については、実際は日本の方が厳しい。フランスでは、労働法第 L1233-3条に基づき、具体的にどのようなケースで解雇できるか明確に定められている。まず、経済的困難な状況になった場合、事業に技術的な変革が起こった場合、企業の事業再編があった場合、ポストが必要なくなった場合である。このうち、経済的困難については、四半期ごとの売り上げの継続的減少によって判断し、企業規模に応じて、11人以下の企業は、1四半期、11人から50人の企業は、2四半期、50人から300人の企業は3四半期、300人以上の企業は4四半期連続して売り上げが減少した場合に、経済的困難にあるという判断がなされる。
経済的困難による解雇の場合は、配置転換の努力などが求められ、また、蚕の順番などについても厳密定められているルールを順守しなければいけない。しかし、これも具体的な、費用を伴う努力を求められるというよりも、実際には、形式的に書類を整える必要があるという意味での努力が求められるのみである。
また、懲戒解雇でも、手続きを踏めばそう難しくはない。簡単に言えば、懲戒解雇を行うまでに、労働者の問題点を指摘した警告を2度行い、その後、雇用関係の継続が難しくなった旨を通知し、解雇を行う。労働裁判の展望を検討した上で、必要に応じて和解を提案するか、裁判まで突き進むかのいずれかを選択する。やり方は人によって異なるが、労働者保護が強いだけに、それに対抗して、私情を挟まず、強い態度でかつプラグマティックな姿勢にて、労務管理に臨むフランス人経営者も多い。
日本的な、経営者の「誠意」ある姿勢は、フランス人には通じないことも多いが、それが日本人経営者の経営理念なのであれば、それを突き通しても大丈夫。そのような姿勢がフランス人従業員に評価されることもないわけではない。ただ、それに合わせて、フランスにおける経営者としての法的な義務をきちんと履行していくことが大事なだけである。

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