自ら住まうところへの嫌悪(オイコフォビア)
Arturo PEREZ-REVERTE スペイン人作家、元ジャーナリスト(戦争取材)
Le FIGARO 2024/09/03 オンライン版
【要約】
北イタリアの街で、目以外の全身を覆うブルカを来た女性が行き交うのをみると、数多くの移民が欧州に渡ってきていることを実感する。しかし、文明の興亡というものは、私のように年を重ね、歴史の本を読む習慣があれば、当然のことだと思える。欧州は常に、様々な人々が交じり合って出来たのであるし、それを止めることはできず、また、労働力不足、高齢社会ということを考えると止めるべきでないのかもしれない。また欧州の過去の悲劇は、人種や宗教の純粋さにこだわったために起こったことも事実である。
しかし、今、起きていることは、様々な宗教、地域があるということだけではない。相互に異質な社会文化の枠組みがいくつも誕生しているという新しい現象であり、新たな欧州が生まれつつある。歴史が、新しい時代の幕開けの鐘が鳴り響かせているのである。
福祉の中で育ち、それによって弱体化した欧州市民は、新しい血、すなわち、正当な野心を持ち、より強くハングリーな人々の粘り強さに取って代わられようとしている。誰が未来にふさわしく、誰が路頭に迷うにふさわしいかは一目瞭然である。多文化主義はおとぎ話だ。歴史が示すように、ある文化は他の文化を押しやり、それを肥やしにするが、最も勢いがあり、それをもたらす人々によって最も支持されているものが、最後には必ず勝利する。そして今日のヨーロッパでは、最も首尾一貫しているのはイスラム教である。
今、欧州の国々が直面しているのは、解決しようのない社会的対立である。そしてその社会的対立は、次の3つのことから生まれている。すなわち、「卑怯さ」、「拝金主義」、「愚かさ」である。まず、イスラム嫌悪主義との批判を受ける恐れからくる「卑怯さ」で、行動をしてこなかった。つぎに、安い労働力を求める「拝金主義」から、無秩序に移民を受け入れてきた。最後に、欧州の地で女性の地位が後退し、民主主義が棄損するという事態に気付かないという「愚かさ」である。
イスラム教徒たちは、自らの宗教とその生活様式を欧州に持ち込んでいる。我々欧州人が、自己中心主義的で愚かであったため、同化プロセスと平等を彼らに与えず、その結果、移民たちは、自分たちの子どもを受入国ではなく、出身国の文化とその価値に従って育てている。彼らには彼らのモスク、街並み、娯楽、メディアがある。出身国では得られない自由と権利を享受するが、彼らは、社会が自らの生活様式を受け入れることを要求している。
移民たちを受け入れ、国民の中に統合していくことが必要である。しかし、彼らの歴史的、文化的遺産と、我々のそれが衝突する。レコンキスタ(スペインの国土回復運動)の授業の内容は批判の対象になるし、コーランが不浄と考える犬をバスに持ち込むことも抗議の対象になり始めた。肌を見せた女性のポスターも批判される。イスラムの伝道師は、女性の取り扱いや、家での役割で、西欧とは全く異なった価値を教えている。
我々は、西欧のあるべき生活習慣を彼らに伝える努力を行ってこなかった。これから試みてももはや遅いだろう。多くのイスラム教徒は、宗教に自分のアイデンティティを見出し、あるいは、欧州の受入国ではなく、自らのルーツとする国にアイデンティティを見出す。
問題が全くないという者、破滅的な状況になるという者、いずれもその見方は間違っている。歴史は確実に、しかし自然のあるがままゆっくりと進んでいるのである。
この状況を冷徹に見つめることで、いささかでもその痛みを和らげることができるであろう。その答えを知るほど、私は長生きできないが、私が問いかけたい疑問は、イスラムの厳格さとその結果としての貧しさや不幸を逃れてきた人々は、欧州全体がモスクとなったとき、どこに逃げるというのだろうか。
【引用部分】
「Le citoyen européen, qui a grandi dans l’assistanat et en a été affaibli, est remplacé par du sang neuf, des ambitions légitimes, la ténacité de gens plus forts et plus affamés. Un coup d’œil suffit pour voir qui mérite un futur et qui mérite d’être laissé sur le bord de la route. Le multiculturalisme est un conte de fées. L’histoire montre que certaines cultures en poussent d’autres en les fécondant, mais que la plus vigoureuse, la mieux soutenue par ceux qui l’apportent, finit toujours par s’imposer. Et dans l’Europe d’aujourd’hui, la plus cohérente reste l’Islam.」
【翻訳】
「福祉の中で育ち、それによって弱体化した欧州市民は、新しい血、すなわち、正当な野心を持ち、より強くハングリーな人々の粘り強さに取って代わられようとしている。誰が未来にふさわしく、誰が路頭に迷うにふさわしいかは一目瞭然である。多文化主義はおとぎ話だ。歴史が示すように、ある文化は他の文化を押しやり、それを肥やしにするが、最も勢いがあり、それをもたらす人々によって最も支持されているものが、最後には必ず勝利する。そして今日のヨーロッパでは、最も首尾一貫しているのはイスラム教である。」

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